シニアのインバウンド客増加による経済効果 「トラベル・ディバイド」の考察⑦
今回は「トラベル・ディバイド」の考察の最終回となります。インバウンド客のシニア(高齢者)層が旅行回数を増やした場合の経済効果について分析します。
インバウンド客の年代別構成比は50歳代が10%、60歳代以上が5%です(観光庁「訪日外国人の消費動向2019年次報告書」)。50歳代以上でわずか15%という少なさに、旅行関係者も驚く方が多いでしょう。40歳代以下が85%という結果はインバウンド客にも深刻な「トラベル・ディバイド」が発生していることが分かります。
出所:観光庁「訪日外国人の消費動向2019年次報告書」、JTB旅行年報2020(2019年の旅行データ)
なお、国連のState of World Population 2023によれば、65歳以上の人口割合は世界全体で10%、先進国(More developed regions)で20%です。2019年のインバウンド客で1位韓国が18%、2位中国が14%であるため、インバウンド客の60歳代以上5%という構成割合はやはりかなり少ないと言えるでしょう。
一方、前回指摘した日本人の国内旅行は50歳代以上では41%と大きな構成となります。インバウンド客の深刻な「トラベル・ディバイド」と比べれば、かなりマシです。これは国内旅行と海外旅行の旅行日数の差によります。日本人の国内旅行の平均泊数は1.70泊、海外旅行の平均泊数は7.79泊となります(観光・レクレーション旅行による平均泊数、観光庁「2019年旅行・観光消費動向調査 年報」)。
旅行日程が長くなれば、持ち運ぶ荷物も大きく重くなり、シニア(高齢者)層の旅行回数は減少します。これは『旅行回数減少の理由はアレだった「トラベル・ディバイド」の考察③』で分析した通りです。日本人の「トラベル・ディバイド」も国内旅行と比べれば、海外旅行はより深刻です。70歳代以上の国内旅行は平均回数1.36回に対し、0.90回(34%減)ですが、海外旅行では平均回数0.16回に対し、0.05回(72%減)です。
出所:JTB旅行年報2020(2019年の旅行データ)
このように、インバウンド客も日本人の海外旅行もシニア(高齢者)層が旅行回数を大きく減少させることが分かりました。ただ、シニア(高齢者)層のインバウンド客は消費金額が大きくなります。観光庁「訪日外国人消費動向調査(2019年)」によるとインバウンド客1人1回当たり旅行消費単価は平均158,560円に対し、50歳代が1.3%、60歳代が2.4%、70歳代が10.4%多くなります。このため、シニア(高齢者)層の旅行回数増加は消費押し上げ効果に直結しやすくなります。
出所:観光庁「訪日外国人消費動向調査(2019年)」
インバウンド客の50歳代以上シニア(高齢者)層の旅行回数が増加する場合のシナリオを分析しました。50歳代の平均消費単価は160,565円、60歳代・70歳代の平均は168,757円です。この基準で、旅行者数が10%増加すると807億円、20%増加で1,615億円、30%増加で2,422億円という経済効果が見込まれます。2019年の訪日外国人旅行消費額は総額4兆8,135億円でした。したがって、消費金額が多いシニア層の旅行回数増加による経済効果は非常に大きいと分析できます。特に、まだまだ現役で元気な50歳代、仕事を引退しても元気な60歳代の旅行回数増加はそれほど難しくないのではないでしょうか。
出所:観光庁「訪日外国人消費動向調査(2019年)」、当社計算
また、50歳代以上の年齢割合が高い国のインバウンド客は、日本での滞在日数が長くなる傾向があります。滞在日数が長ければ、連泊の可能性も高まります。これは、昨今日本の旅行業(特に宿泊業)で問題となっている人手不足緩和にも寄与するかもしれません。もちろん、連泊は手間がかかりにくいためです。
出所:観光庁「訪日外国人消費動向調査(2019年)」、当社計算
以上、7回にわたって「トラベル・ディバイド」の考察を行いました。荷物を軽くし、「旅行に行きたい」シニア(高齢者)層が旅行しやすい環境を作ることにより旅行回数が増加すれば、彼らの幸福感の向上と認知症リスクの低減に繋がり、経済的な利益ももたらします。また、連泊増などにより旅行業界の人手不足解消に繋がる可能性もあります。さらに、この取り組みはユニバーサルツーリズムを推進し、障がい者や乳幼児連れの家族にも利益をもたらすでしょう。
結論として、「トラベル・ディバイド」の解消は、社会的にも経済的にも重要です。もちろん、旅行しやすい環境を作ることは「トラベル・ディバイド」の解消に繋がるだけでなく、全ての人が旅行をしやすくなり、旅行業界全体の繁栄に繋がるでしょう。「誰一人取り残さない」というSDGsの理念実現にもなります。
当社の衣類レンタルを利用すれば、荷物が軽くなり、シニア(高齢者)層や障がい者や乳幼児連れの家族だけでなく、全ての人が旅行しやすい環境を作ることができます。しかも、衣類レンタルは旅行者が料金を負担するものであるものの、旅行者も受託手荷物料金の削減や荷物があることによるタクシー料金、ロッカー代などの削減に繋がり、かなりの部分の衣類レンタル料金を相殺できます。また、旅行業界や地方自治体などの投資負担はありません。このように、多くの関係者がほとんど費用負担無く、「トラベル・ディバイド」を解消できる旅行者向け衣類レンタルの普及をともに進めませんか。
現在、当社では宿泊業者様、旅行会社様の販売パートナーを募集しています。「投資ゼロ」で旅行客を増やし、ユニバーサルツーリズムやサステナブルツーリズムに一緒に貢献しませんか?また、売上計上時に当社が売上手数料10%をパートナーの宿泊業者様、旅行会社様にお支払いします(手数料率は今後変更の可能性があります)。「宿泊業者様・旅行会社様のメリット」、「旅行者のメリット」などについての詳細は以下のボタンをクリックしてください。
本件についてご興味がございましたら、お気軽に当社までご連絡ください。宜しくお願い致します。