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旅行回数減少の理由はアレだった「トラベル・ディバイド」の考察③

旅行回数減少の理由はアレだった「トラベル・ディバイド」の考察③

 

引き続き、「トラベル・ディバイド」について、その原因を探っていきたいと思います。前回は、高齢者の旅行回数減少の理由は「お金」でも「時間」でもないことを検証しました。むしろ、逆相関という意外な結果でした。

前回掲載した2018年に発表された観光庁の「旅行・観光消費動向調査」では国内宿泊旅行(観光・レクリエーション目的)を行わなかった方に対する「旅行しなかった(できなかった)理由」は1位が「仕事などで休暇が取れない(29.3%)」、2位が「家計の制約がある(26.4%)」、3位が「家族や友人と休日が重ならない(21.0%)」でした。1-3位とも時間やお金が理由として挙げられています。

一方、4位が「自分の健康上の理由で(18.1%)」でした。そこで、今回は旅行回数と「体力テスト」の関係を調べたいと思います。

旅行をしない理由

出所:観光庁「旅行・観光消費動向調査 2018年1-3月期」

スポーツ庁「 2022年度体力・運動能力調査」から全ての年齢層(6歳から79歳)で共通して行われる「握力」、「上体起こし」、「長座体前屈」の年代別数値を指数化して、「体力テスト指数」を算出しました。この「体力テスト指数」と海外旅行回数との相関係数は0.78と非常に高い相関性となりました。

スポーツ庁「 2022年度体力・運動能力調査」

注:「体力テスト」は全ての年齢層(6歳から79歳)で共通して行われる「握力」、「上体起こし」、「長座体前屈」の年代別数値を指数化

出所:スポーツ庁「 2022年度体力・運動能力調査」、JTB旅行年報2020

 

また、同じ「 2022年度体力・運動能力調査」で65-79歳に対して、「10kg程度の荷物を10m運べますか?」という調査があります。この調査では「できない」という回答が65-69歳では27%、70-74歳では35%、75-79歳では42%でした。

荷物

出所:スポーツ庁「 2022年度体力・運動能力調査」

 

国際線に搭載できる受託手荷物の重量制限は全日本空輸のエコノミークラスの場合は23kg(50ポンド)、ビジネスクラス・ファーストクラスの場合は32kgまでです。エコノミークラスの場合の重量制限である23kg(50ポンド)はほぼ全ての国際線に適用されます。それは米国NIOSHが理想的な条件下で持ち上げられる最大推奨負荷重量を51ポンド(23.1kg)としているためです。NIOSH(National Institute for Occupational Safety and Health)は労働関連の傷病を予防するための研究と勧告を行う米国連邦機関です。最大推奨負荷重量はあくまでも屈強な空港労働者の健康被害を防ぐための基準であり、平均的な旅行者が運ぶことを推奨する重量ではありません。しかし、多くの旅行者が海外旅行時に制限ぎりぎりとなる重量23kg弱のスーツケースを飛行機に預けます。

 

重量制限

注:エコノミークラスの場合

出所:各航空会社HP

 

荷物

70歳代で35-42%の人が10kg程度の荷物を10m運べないということは、重量が23kg近くの海外旅行に行くのは極めて大変なことであることが分かります。このように、旅行回数減少の理由は「重い荷物」である可能性が極めて高いと言えるのではないでしょうか。

次回、「トラベル・ディバイド」を解消すべき理由を探ります。

 

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