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旅行時の脱炭素:スキポール空港の便数削減騒動は日本の旅行業界にとって他人事ではない

旅行時の脱炭素:スキポール空港の便数削減騒動は日本の旅行業界にとって他人事ではない

 

目次

1:世界第3位のスキポール空港の発着数削減計画

2:ほぼ全てを空路で占める日本の観光業界にとって重要な問題

3:インバウンド客のCO2排出量は飛行機による移動時が96%

4:解決案は荷物の削減

 

1:世界第3位のスキポール空港の発着数削減計画

本日、2023年11月29日の日本経済新聞に「航空、脱炭素へ欧州で圧力」との記事が掲載されました。この記事によると『オランダ政府は国際旅客数で世界第3位のスキポール空港の発着数を8%削減する計画を中止すると発表した。しかし、スキポールグループのソンダフ暫定最高経営責任者(CEO)は「計画よりはるかに大幅な発着数削減を求めている政党もあり、便数がはるかに少なくなる結果になりかねない」と語った。』とあります。

さらに、記事では、『発着数を減らそうとする試みは今後も続きそうだ。2050年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにする公約の期限が迫るにつれ、航空業界に対する世論と政治的ムードが一層厳しくなっているようにみえる。』とあります。

スキポール空港

 

2:ほぼ全てを空路で占める日本の観光業界にとって重要な問題

発着数削減の動きはインバウンド客の入国方法の98%以上を空路が占める日本の旅行業界にとって他人事ではありません(観光庁「訪日外国人消費動向調査」)。港湾開発に莫大な費用が掛かるため、海路での入国数増加も限界があるでしょう。このため、飛行機の温暖化ガス排出量(GHG)を実質ゼロにするためのあらゆる方策が求められます。航空業界ではSAF(持続可能な航空燃料)などの開発などを進めていますが、今すぐに大きくGHGを削減する後述するような方法は見逃されています。

飛行機

 

3:インバウンド客のCO2排出量は飛行機による移動時が96%

国際民間航空機関(ICAO)の「Carbon Emissions Calculator(ICEC)」を用いると空港間の旅客と荷物によるCO2排出量が計算できます。このICECによると成田国際空港との往復で旅客によるCO2排出量(往復)は米国ニューヨーク(JFK国際空港)では943kg、シンガポール(チャンギ国際空港)では594kg、台湾(桃園国際空港)では298kgとなります。同様に、荷物(20kgの重量)を計算するとそれぞれ244kg、114kg、55kgとなります。3空港を平均すると旅客は612kg、荷物(20kgの重量)は138kgのCO2排出量となります。

一方、日本滞在時のCO2排出量は1週間で34kg(4.9kg/日の7日間分)となります(国立環境研究所「日本の温室効果ガス排出量データ」による日本人の家庭からの排出量を参考)。

インバウンド客の排出量出所:国際民間航空機関(ICAO)の「Carbon Emissions Calculator(ICEC)」、国立環境研究所「日本の温室効果ガス排出量データ」

 

従って、インバウンド客が日本に一週間滞在した場合、旅行全体のCO2排出量の96%(749kg)が飛行機移動時による排出となります。

なお、日本国内を鉄道で移動してもCO2排出量は多くありません。東京から北海道の札幌を往復(2,342km)しても、40kgの排出量です(国土交通省)。これを先ほどの日本滞在時の34kgに加えても、合計74kgにしかならず、飛行機移動による排出量の割合は91%と圧倒的です。

大きな荷物

 

4:解決案は荷物の削減

先述のように、航空業界ではSAFの開発を進めていますが、SAFが主流となるのは2050年と言われています。一方、荷物の削減により簡単に飛行機移動によるCO2を大きく削減できます。荷物(20kgの重量)のCO2排出量は138kgと飛行機移動の18%を占めます。1週間の日本滞在時の排出量(34kg)に対しても、4倍の排出量です。荷物の削減効果は著しく大きいということが理解できるでしょう。

旅行者が運ぶ荷物のCO2排出量の大きさを自覚し、荷物を減らせば排出量を大きく減らすことができます。日本で必要な物品をレンタルするサービスの拡充など、具体的な取り組みが求められます。航空業界の脱炭素化は世界的なトレンドです。荷物削減によるCO2排出量の削減は、旅行者一人ひとりの小さな行動から始まります。しかも、荷物が軽くなれば、ラクに旅行できます。

ラクで気候変動抑制に貢献する旅行を選ぶか、辛くて気候変動悪化に繋がる旅行を選ぶか。皆さんはどちらを選択しますか。

気候変動抑制

荷物

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