外国人観光客が訪問しない文化財が豊富な意外な地域
目次
1:国宝、重要文化財とは
2:国宝、、重要文化財の件数別ランキング
3:外国人観光客が訪問しない国宝・文化財が豊富な都道府県
4:地域志向の旅、馴染みのない場所への旅を求める旅行者には最適の「穴場」
1:国宝、重要文化財とは
今回、文化庁のWebサイトにより、都道府県別に国宝・重要文化財を集計しました。
「国宝」とは文化庁が「世界文化の見地から特に価値の高いもの」を指定したものです。また、有形文化財のうち重要なものを「重要文化財」に指定しています。「国宝」「重要文化財」は「建造物」と「美術工芸品」に分類されます。2023年4月1日において「国宝」は1,132件、「重要文化財」は13,377件(国宝の件数を含む)が指定されています。「国宝」のうち「建造物」は230件、「美術工芸品」は902件指定されています。また、「重要文化財」のうち「建造物」は2,557件、「美術工芸品」は10,820件指定されています(それぞれ国宝の件数を含む)。
文化財の専門家でない私個人の見解としても「国宝」を拝観すると大きな感動があります。「国宝」を拝観してがっかりしたことはほとんどありません。特に国宝建造物の拝観では、より大きな感動を覚えることが多いです。
2:国宝、、重要文化財の件数別ランキング
国宝建造物は1位:奈良64件、2位:京都52件でした。古都が置かれていた2府県が順当に1位と2位を占めたのは、特に意外性はありません。しかし、3位の滋賀(22件)、4位兵庫(11件)、5位栃木、和歌山、広島(それぞれ7件)は意外ではないでしょうか。特に3位の滋賀には、京都の隣県とはいえ驚く方も多いでしょう。
都道府県別国宝建造物ランキング(件)
出所:文化庁
国宝を除いた重要文化財建造物は1位:京都248件、2位:奈良203件と国宝同様に2府県がトップ2を独占しました。しかし、ここででも3位:滋賀167件、4位:兵庫101件、5位:大阪となり、3位に滋賀が食い込んでいます。
都道府県別国の重要文化財(件)
出所:文化庁
一方、国宝美術工芸品は1位:東京286件、2位:京都185件、3位:奈良142件で、現在の首都と古都がトップ3を占めます。美術工芸品は、建造物と異なり移動が可能なため、現在の首都東京に集められたのでしょう。4位は大阪57件、5位は滋賀34件と滋賀県はここでも5位に食い込んでいます。
都道府県別国宝美術工芸品(件)
出所:文化庁
国宝を抜き出した重要文化財美術工芸品でも傾向は変わらず、1位:東京、2位:京都、3位:奈良、4位:滋賀、5位:大阪です。
都道府県別国重要文化財美術工芸品(件)
出所:文化庁
3:外国人観光客が訪問しない国宝・文化財が豊富な都道府県
訪日外国人の都道府県別訪問率(2019年、複数回答)では、1位:東京47.2%、2位:大阪38.6%、3位:千葉35.1%、4位:京都27.8%、5位:奈良11.7%と5都道府県に集中しています。一方、上記の通り国宝・文化財が豊富な滋賀県は32位:0.6%と下位です。
訪日外国人の都道府県別訪問率(2019年、複数回答)
1 | 東京都 | 47.2% |
2 | 大阪府 | 38.6% |
3 | 千葉県 | 35.1% |
4 | 京都府 | 27.8% |
5 | 奈良県 | 11.7% |
6 | 愛知県 | 9.0% |
7 | 福岡県 | 8.7% |
8 | 北海道 | 8.0% |
9 | 神奈川県 | 7.8% |
10 | 沖縄県 | 6.1% |
11 | 兵庫県 | 6.0% |
12 | 山梨県 | 5.5% |
13 | 静岡県 | 4.8% |
14 | 大分県 | 3.3% |
15 | 広島県 | 3.0% |
16 | 岐阜県 | 3.0% |
17 | 長野県 | 2.9% |
18 | 石川県 | 2.0% |
19 | 熊本県 | 1.9% |
20 | 長崎県 | 1.5% |
21 | 栃木県 | 1.3% |
22 | 富山県 | 1.1% |
23 | 和歌山県 | 1.1% |
24 | 埼玉県 | 1.1% |
25 | 鹿児島県 | 1.0% |
26 | 岡山県 | 1.0% |
27 | 宮城県 | 1.0% |
28 | 香川県 | 1.0% |
29 | 佐賀県 | 0.9% |
30 | 茨城県 | 0.9% |
31 | 三重県 | 0.7% |
32 | 青森県 | 0.7% |
33 | 滋賀県 | 0.7% |
34 | 新潟県 | 0.6% |
35 | 山口県 | 0.6% |
36 | 群馬県 | 0.5% |
37 | 宮崎県 | 0.5% |
38 | 鳥取県 | 0.5% |
39 | 岩手県 | 0.4% |
40 | 山形県 | 0.4% |
41 | 愛媛県 | 0.4% |
42 | 秋田県 | 0.3% |
43 | 福島県 | 0.3% |
44 | 徳島県 | 0.3% |
45 | 島根県 | 0.2% |
46 | 福井県 | 0.2% |
47 | 高知県 | 0.2% |
出所:観光庁
そこで、国宝・重要文化財の都道府県別シェアと訪日外国人の都道府県別訪問率を比較し、文化財の「穴場」である都道府県ランキングを作成しました。かなり意外な県が上位に食い込む結果となりました。
国宝建造物の都道府県別シェアと訪日外国人の訪問率の比較
1 | 滋 賀 | 5.2% |
2 | 和歌山 | 1.8% |
3 | 三 重 | 0.8% |
4 | 愛 媛 | 0.7% |
5 | 福 井 | 0.6% |
6 | 島 根 | 0.5% |
7 | 高 知 | 0.4% |
8 | 山 口 | 0.3% |
9 | 山 形 | 0.3% |
10 | 福 島 | 0.3% |
出所:観光庁、文化庁
国宝全体(建造物と美術工芸品の合計)の都道府県別シェアと訪日外国人の訪問率の比較
1 | 奈 良 | 6.5% |
2 | 滋 賀 | 4.3% |
3 | 和歌山 | 2.1% |
4 | 愛 媛 | 0.7% |
5 | 福 井 | 0.3% |
6 | 岩 手 | 0.3% |
7 | 栃 木 | 0.2% |
8 | 島 根 | 0.2% |
9 | 山 口 | 0.2% |
10 | 山 形 | 0.1% |
出所:観光庁、文化庁
重要文化財建造物の都道府県別シェアと訪日外国人の訪問率の比較
1 | 滋 賀 | 6.7% |
2 | 和歌山 | 2.3% |
3 | 愛 媛 | 1.6% |
4 | 岡 山 | 1.2% |
5 | 福 島 | 1.0% |
6 | 山 口 | 1.0% |
7 | 福 井 | 1.0% |
8 | 新 潟 | 0.8% |
9 | 島 根 | 0.8% |
10 | 山 形 | 0.8% |
出所:観光庁、文化庁
重要文化財全体(建造物と美術工芸品の合計)の都道府県別シェアと訪日外国人の訪問率の比較
1 | 滋 賀 | 5.5% |
2 | 和歌山 | 1.9% |
3 | 愛 媛 | 0.8% |
4 | 三 重 | 0.7% |
5 | 福 井 | 0.6% |
6 | 島 根 | 0.5% |
7 | 高 知 | 0.5% |
8 | 山 口 | 0.4% |
9 | 福 島 | 0.4% |
10 | 山 形 | 0.4% |
出所:観光庁、文化庁
4:地域志向の旅、馴染みのない場所への旅を求める旅行者には最適の「穴場」
Booking.comの「2023 Travel Predictions」によれば、88%の旅行者はノスタルジックな旅を、80%が地方志向の旅を、73%が馴染みのない場所への旅を望んでいることが分かりました。今まで大都市や大観光地に集中しがちであった外国人旅行客が、地方へ分散する可能性や傾向があります。
2023年に最も人気となるであろう旅行や体験
出所:Booking.com
東京・大阪・京都を既に何度も訪問した外国人旅行者は、次回の日本旅行ではそれ以外の場所に赴き、日本の歴史や文化財を静かに堪能してみてはいかがでしょうか。その候補が今回紹介したような滋賀、和歌山、愛媛、三重県、福井など、観るべき文化財が豊富に存在しても外国人旅行者がほとんど訪れない都道府県です。少し不便な場所もありますが、地方旅行に不慣れな外国人観光客の方は是非、当社のコンシェルジュサービスもご活用ください。