奈良県の観光地巡り③
最終日は奈良市から離れた場所にある2ヶ所の重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建)に行きました。なお、奈良県には3ヶ所の重伝建があります。
目次
1:今井町伝統的建造物群保存地区
2:宇陀市松山重要伝統的建造物群保存地区
1:今井町伝統的建造物群保存地区
午前中に訪問したのは橿原市(かしはらし)の「今井町伝統的建造物群保存地区(以下、今井町)」です。奈良駅から約50分離れた場所にあります。なお、橿原市は694年に成立した日本初の本格的な都城であった藤原京(平城京へ遷都される前の都城)があった場所です。
今井町は戦国時代に浄土真宗の称念寺(しょうねんじ)の寺内町(じないちょう)として成立し、江戸時代は天領(江戸幕府の直轄地)となり、商業都市として発展しました。伝統的建造物として、建築物が504棟もあり、全国の重伝建の中でも最も多い地区です。建築物のうち9軒は国の重要文化財に指定されています。
このように、多くの伝統的建造物が現存し、町並みも江戸時代の雰囲気を色濃く残しています。こうしたことから、NHKの朝ドラ「あさが来た」「ごちそうさん」などのテレビドラマや映画「燃えよ剣」「るろうに剣心 最終章 The final」のロケ地でもあります。私はこれまで多くの重伝建に行きましたが、その中でも今井町の街歩きはとりわけ楽しかったです。是非、多くの方に今井町の散策を楽しんで頂きたいです。
2:宇陀市松山重要伝統的建造物群保存地区
今井町の後に、宇陀市松山重要伝統的建造物群保存地区(以下、宇陀松山)へ行きました。宇陀松山は今井町から電車とバスを乗り継ぎ、1時間10分程度の場所にあります。平地にある今井町と比較し、宇陀松山は自然豊かな山間部です。宇陀松山は「吉野葛」の産地として有名です。また、清酒「初霞」が全国的にも有名な「久保本家酒造」と清酒「千代の松」を造る「芳村酒造」という2つの酒造メーカーがあります。
宇陀松山の歴史は古く、飛鳥時代には宮廷の狩場だったと言われています。戦国時代には秋山氏の本拠地、秋山城(宇陀松山城)の城下町として発展しました。その後、宇陀松山城は福島高晴(福島正則の弟)や織田信雄(織田信長の次男)などの居城となりました。
宇陀松山城は山城跡として残っています。天守跡まで登るには20分ほどかかり、冬でもかなり汗をかきました。ただ、天守跡からの見晴らしはとても良いので、ハイキングにはちょうどいいと思います。
織田信雄の後、織田家が宇陀松山藩として領地を治めました。しかし、1694年に「宇陀崩れ」と言われる織田家のお家騒動が起こり、宇陀松山藩は廃藩となり、織田家は柏原藩(かいばらはん)に国替になるという数奇な運命をたどります。なお、私は柏原藩があった兵庫県丹波市柏原に約1年前に行きましたが、隆盛を誇った織田家の見る影もない質素な場所でした。
廃藩となった宇陀松山藩は天領となり、交通の要衝として栄えました。また、免税制度などにより有力商人を誘致し、商家町として発展しました。特に、生薬を取り扱う和薬店が12軒、薬用酒を取り扱う薬酒店が12軒、薬剤を調合する合薬店が23軒など多くの薬屋があったことが特徴です。今でも日本最古の「森野旧薬園」が現存し、見学もできます。
宇陀松山は古い建物と町並みが江戸時代の雰囲気を残すものの、今井町と比べるとかなり小規模なので、今井町から宇陀松山へ行くと少しがっかりするかもしれません。行く順序は宇陀松山に行ってから今井町に行くほうがいいでしょう。一方、宇陀松山は都会の喧騒を離れ、山間部でゆっくりしたい観光客には最適の場所と言えるでしょう。
宇陀松山の観光拠点である道の駅「宇陀路 大宇陀」の横には奥大和ビールタップルームがあり、作り立ての生ビールを飲むことができます。私は不覚にもタップルームを見落とし、道の駅で「曽爾高原ビール」のYOROI(アルト)を飲みました。曽爾高原ビールも奈良県宇陀郡曽爾村で作られた地元のクラフトビールです。