第1回：神楽坂商店街の店主に聞く – 日本ならではの陶器の選び方：「陶器は手に取って選んでもらいたい。」丸岡陶苑と陶器の魅力

今回から始まった「神楽坂商店街の魅力を探る」シリーズ。記念すべき第1回目は、神楽坂で130年以上続く老舗陶器店「丸岡陶苑」の四代目代表取締役、岡﨑真一さんのインタビューです。神楽坂には陶器店が多く存在しますが、その背景には花柳界や料亭文化、そして、お屋敷街が関係しています。真一さんの語る陶器の魅力と神楽坂の歴史を、ぜひお楽しみください！

Episode 1: Insights from a Kagurazaka Store Owner – How to Choose Japanese Pottery: “Pottery Should Be Picked Up and Felt” – Exploring Maruoka Toen and the Charm of Ceramics in Tokyo

130年以上続く老舗陶器店「丸岡陶苑」の歴史

丸岡陶苑は1892年（明治25年）創業の老舗です。創業者は真一さんの曾祖父である岡﨑清太郎さん。当時は陶器の運搬が水運を使って行われており、日本橋川を拠点にした人形町や蛎殻町の卸問屋から神楽坂まで陶器が運ばれていました。現在では交通網の発達により産地から直接仕入れる形に変わっています。残念ながら、創業時に深い関係があった「河合陶器店」は大久保通りの拡張工事の影響で2017年に閉店しましたが、丸岡陶苑は今も神楽坂でその伝統を守り続けています。

神楽坂という街自体も、歴史ある商店街として知られています。丸岡陶苑のような100年以上続く老舗がいくつも存在し、神楽坂の落ち着いた雰囲気を作り上げています。

陶器と神楽坂の深いつながり

神楽坂にはその発祥が江戸時代（1603-1867）末期まで遡る花柳界があり、料亭文化が発展しました。昭和12～13年頃には芸者・幇間が約600人、料亭が150軒を超えたと言われています。丸岡陶苑も料亭とのつながりが深く、お得意様には料亭が多かったそうです。真一さんが家業に携わり始めた1983年頃でも、料亭が30軒ほどありました。現在ではその数は減少しましたが、地元の飲食店とのつながりは今も続いています。

最近では、飲食店の陶器の買い方も変わってきたようです。「以前は同じ種類を大量に購入されていましたが、今は料理に合わせて多種類の器を少量ずつ選ぶお店が増えました」と真一さんは言います。器選びのスタイルが変わる中でも、直接手に取って選べる陶器店の存在価値は高まっているようです。

「手に取って選ぶ」ことの大切さ

真一さんが一番伝えたいのは、「陶器は手に取って選んでほしい」ということ。西洋と日本では食器の使い方が異なります。西洋では食器を置いて使うのが基本ですが、日本では器を手に持つ文化があります。そのため、器の軽さや持った時の感覚が大事だといいます。

丸岡陶苑には軽くて薄い器を求めるお客様が多く、特に日本酒好きの方には薄い「ぐい飲み」が人気だそうです。科学的にも薄い器の方が飲み物を飲むときの口当たりがよいことが証明されているそうです。「こうした品揃えが評価されるのが何よりうれしい」と語る真一さん。神楽坂には日本酒にこだわりを持つ飲食店が多く、それが丸岡陶苑のこだわりと共鳴しているのでしょう。

外国人のお客様の増加

近年、日によっては外国人のお客様の売り上げが全体の約半分を占めることもあるそうです。旅行者だけでなく、神楽坂に住む外国人も多く来店されるとのこと。人気の商品は箸置きや漆器、抹茶茶碗などで、「侘び寂び」を感じる備前焼や萩焼も注目を集めています。一方で、夫婦茶碗のように男女別の大きさがある器に驚かれることも多いそうです。