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間違いだらけの地方観光活性化「行けなきゃ意味ないよ」

「行けなきゃ意味ないよ」マイカー観光に頼る地方観光は壊滅的な危機を迎える

 

目次

1、始めに

2、既に宿泊者数が減少し始めた都道府県も

3、日本人観光客の宿泊者数は過半の都道府県がマイナス

4、日本人観光客とマイカー観光の相関性が高い

5、高齢化により自動車保有台数は減少へ

6、情報発信、Web広告の効果はあるのか

7、特定の外国人観光客に好機

8、外国人観光客はどこに注目すべきか

9、ワーケーション、ブレジャー需要の取り込みは必須

10、地方観光活性化のアイデア

 

1、始めに

私は毎月のように旅行し、旅行記をBlogで投稿しています。大都市ではなく、地方を旅行し、主に外国人旅行者に旅行情報を発信しようと考えています。こうして地方を旅行するうちに、気付いたことがあります。

観光地の看板は綺麗になり外国語案内が充実してきました。綺麗なトイレの整備も進んできたと思います。また、外国語での道案内や道路標識も増えてきました。しかし、観光地まで公共交通機関で行こうとすると極めて不便なのです。

不便であるというのは、観光地までの公共交通機関のアクセス方法だけでなく、頻度の問題があります。ある観光地まで列車やバスで行けても、一日に3-5本程度の運行ということも少なくありません。それでは観光地に行けても、戻れるのは半日後という場合もあります。行きたかった観光地へは公共交通機関の路線がなく、行くことを諦めたこともありました。

また、地方のワンマン列車の乗降方法が非常に難しく感じます。多くのワンマン列車は乗降の際に自分で乗降ボタンを押す必要があったり、整理券を取ったたりする必要があります。また、一両目の後ろのドアからだけとか前のドアだけからしか乗降できないケースもあります。しかも、そうした情報は日本語でしか案内がありません。日本人でも難しいワンマン列車の乗降は外国人にはほぼ不可能に思えます。どうして、外国語の案内はないのでしょうか。

ワンマン列車

ワンマン列車

観光地の看板を綺麗にするのも大事ですが、私は公共交通機関で如何にアクセスできるかを旅行者目線で考えるべきだと思います。実際、地方の観光案内所で公共交通機関での行き方を聞いても、調べるのに10分以上かかる案内所も珍しくありません。どうしてそんなに手間取るのか理由を聞くと「自分たちは自家用車で観光地に行くため、公共交通機関での行き方に詳しくない」とのことです。地方観光は自家用車かレンタカー、観光バスで行くことが大前提になっていることがよく分かります。

こうした疑問を持ったため、自分で地方観光の実態を様々なデータを使用し、調べてみることにしました。調査の結果、今までの地方観光政策が如何に間違っていたかを理解することができました。そこで分析内容を多くの地方観光関係者に知ってもらいたく、Blogを執筆することにしました。

 

2、既に宿泊者数が減少し始めた都道府県も

2020年以降は新型コロナウイルスの影響があるので、2019年までのデータを用いて調べてみました。最初に驚いたのは2019年までに既に全体の宿泊者数が減少に転じている都道府県があったということです。私は外国人観光客が2019年まで急増していたので旅行業全体が活況であると思っていたのですが、そうではなかったのです。

私は25年間アナリストをしてきた経験から、統計を分析する際には移動平均をよく使用します。移動平均を用いると自然災害などによる落ち込みやイベントによる一過性の需要増など特殊要因を除外できることが多いためです。そのため、今回の分析にも5年移動平均を使用しました。

まず始めに、観光庁が発表している「宿泊旅行統計調査」から全体の宿泊者数を5年移動平均にし、前年比増減率を計算しました。その結果、2019年までの3年間平均の増減率がマイナスになった都道府県は9つもありました。具体的にはマイナス幅が大きな順に山口県、山形県、三重県、高知県、秋田県、群馬県、長野県、宮城県、鳥取県です。

全宿泊者増減

 

宿泊数増減

 

3、日本人観光客の宿泊者数は過半の都道府県がマイナス

特に、日本人観光客の宿泊数に限定すれば、2019年までの3年間平均の増減率(同様に、5年間移動平均で計算)は28都道府県と過半となりました。この事実は私にとって大きなショックでした。観光関連の方々は知っていたことかもしれませんが、コロナ前から多くの都道府県で国内観光は低迷していたということになります。

日本人観光客の宿泊者増減

では、どうしてコロナ前から多くの都道府県で日本人観光客は低迷していたのでしょうか。全体が伸びていたので、気づかなかっただけでしょうか。確かに、日本人観光客も全体では宿泊者数は伸び続けています。特に、大阪府、東京都、沖縄県のトップ3は2019年までの3年平均伸び率が5%を超えています。このトップ3は全体宿泊者数の2位(大阪府)、1位(東京都)、5位(沖縄県)です。観光に強い都道府県がより強くなり、観光に弱い都道府県がより弱くなるという大きな格差が出来てしまったのです。

 

4、日本人観光客とマイカー観光の相関性が高い

私はその原因を調べてみて、また驚きました。日本人観光客の宿泊数伸び率(都道府県別、以下同様)と自家用車(マイカー)観光比率(旅行先での交通手段が自家用車の割合、出所:JTB旅行年報)に高い相関性(逆相関性)が見つかったのです。日本人観光客の(3年間平均)宿泊数伸び率と2019年の自家用車観光比率の逆相関係数はマイナス0.62(マイナス1だと100%の逆相関性)と極めて高い相関性です。つまり、自家用車(マイカー)観光比率が高い都道府県では日本人観光客の宿泊数が減少しているのです。

日本人観光客とマイカー

また、自家用車観光比率と列車・バスの公共交通機関の観光比率(旅行先での交通手段が公共交通機関の割合)も強い逆相関性(マイナス0.64)があります。つまり、公共交通機関が利用できないので、自家用車を利用していることが見て取れます。

交通手段

自家用車観光比率が高いということは集客範囲も狭くならざるを得ません。自家用車観光は道路の混雑などオーバーツーリズム問題にも直結しやすく、環境負荷も高いので、良いことは何もありません。

なお、国土交通省のデータでは、1人が1km移動する際のCO2排出量は自動車の130gに対し、航空機は98g(自動車の75%)、バスは57g(同44%)、鉄道は17g(同13%)です。ESGやSDGを推進する都道府県や市町村は環境負荷の観点から自家用車観光を減らす努力をする必要があります。

 

5、高齢化により自動車保有台数は減少へ

想像してみればすぐ分かることですが、日本人観光客の宿泊数伸び率と自家用車観光比率の関係が極めて高いということは今後の高齢化率加速の中で地方観光に壊滅的なダメージとなるリスクがあります。

今後、高齢化は全ての都道府県で起こります。問題は高齢者の免許返納や若年層の自動車普及率減少により、高齢化が進めば自動車保有台数が減少することです。実際、3年前と比較し、減少に転じた都道府県は9つにもなります。

高齢化

自動車保有台数

高齢化と保有台数

内閣府の世帯主の年齢階級別の自動車普及率データでは60-69歳が57.9%、70歳以上が44.5%の一方、30-39歳が47.0%、29歳以下が24.5%となります。人口割合を加味して、年齢階級別保有台数を計算すると60-69歳と70歳以上が30-39歳と20~29歳を大きく上回ることが分かります、つまり、高齢化進行により今後10~20年間で高齢者の免許返納が増えたり、寿命で亡くなる方が増えれば、自動車保有台数は一気に減少することになります。単純計算では今後20年間で自動車保有台数は24%減少することとなります。また、警察庁によると2019年には運転免許保有者がついに減少に転じました。もう、時間がありません。何も対策をしなければ、今後10年以内に自家用車観光比率が高い都道府県の観光産業は壊滅的なダメージを受ける可能性があります。

年齢階級別自動車普及率

年代別保有台数

運転免許

6、WebやSNSの情報発信効果はあるのか

では、地方観光活性化のために、情報発信をすればいいのでしょうか。おそらく、多くの都道府県の観光局がWeb(ホームページ)やSNSを使用した情報発信を積極化していると思います。では、果たしてその効果は十分なのでしょうか。

各都道府県の観光局の情報発信頻度を測定するのは困難です。そのため、観光客の自発的な情報アクセスであるGoogle検索と観光客の自発的な情報発信であるインスタグラムのハッシュタグ数を各都道府県毎に調べてみました。例えば、調べた検索ワードとハッシュタグは各都道府県に「旅行」、「観光」を付けました。例えば、北海道旅行、北海道観光です。その結果、またしても観光に強い都道府県がより検索されやすく、発信されやすく、観光に弱い都道府県はより検索されにくく、発信されにくいという極端に大きな格差があることが判明しました。

都道府県別での上位5都道府県の検索平均数は下位5県と比較し18倍、同様にハッシュタグ数は30倍の格差でした。なお、宿泊総数は上位5都道府県と下位5県では13倍です。Web検索、SNSでは勝ち組、負け組がより鮮明となっています。

websns

日本人観光客の(3年間平均)宿泊数伸び率とWeb、SNSは高い相関性が見て取れます。日本人観光客の(3年間平均)宿泊数伸び率とGoogle検索との相関係数は0.66、インスタグラムのハッシュタグ数の相関性は0.40となります。

しかし、トップ5の都道府県を除外すると日本人観光客の(3年間平均)宿泊数伸び率とGoogle検索、インスタグラムのハッシュタグ数には相関性がほとんどありません。Google検索との相関係数は0.31、インスタグラムのハッシュタグ数の相関性は0.02となります。逆相関ではないので、WebやSNSを使用しても全く意味がないわけではありません。しかし、同様にトップ5を除外した自家用車観光比率の逆相関係数はマイナス0.46とWebやSNS以上に(逆)相関係数が高いことが分かります。

Google検索

Instagram#

トップ5を除いた日本人観光客とマイカー

つまり、いくらWebやSNSで情報発信しても、その観光地に行く方法が不便であれば、観光客は行かないのです。当たり前のことですが、「行けなきゃ意味ないよ」です。この当たり前のことを忘れて情報発信や綺麗な看板の設置などに偏った観光促進策を行っていると私は考えています。

 

7、特定の外国人観光客に好機

日本人観光客は公共交通機関では行けないような不便な場所には行かないということが分かりました。では、外国人観光客はどうでしょうか。外国人の宿泊者伸び率(3年間平均)と自家用車観光比率を取ってみると(逆)相関性がありませんでした。

外国人の宿泊者伸び率

これは日本人観光客の伸び率とは違い地方の観光地にとっては心強いデータかもしれません。しかし、このデータも要注意です。伸び率では自家用車観光比率(旅行先での交通手段が自家用車の割合)と相関性がなかったのですが、外国人の都道府県別宿泊シェアでは自家用車観光比率の相関性がマイナス0.61と非常に高くなります。つまり、そもそも不便な場所には外国人は行っていないのです。地方の観光地を訪れる外国人はかなり小さな数なので、伸び率との(逆)相関性が高くなかっただけでした。外国人観光客は日本人観光客以上に大阪府や東京都、京都府など大観光地に集中しています。

外国人観光客の宿泊シェアと自家用車観光比率

外国人観光客の訪問率

観光庁の「訪問地のうち、便利と感じた場所」という調査(2019年分)においても、「公共交通の利用」項目は都市部(東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・京都・兵庫)の86%に対し、地方部では8%と都市部と地方部で10倍の差があります。

では、外国人観光客にも期待ができないのでしょうか。そんなことはありません。ただ、外国人観光客の絞り込みが必要です。以下、観光庁「訪日外国人消費動向調査」のデータを使用し、分析してみました。

 

8、外国人観光客はどの国に注目すべきか

先程のように、全体的には一極集中の外国人観光客ですが、リピーターは違います。日本の訪問回数が増えるとともに、訪問する都道府県数も増えていることは訪問地の「分散」値を計算すれば分かります。ここで計算した「分散」値は都道府県別訪問シェアを使用して計算しました。「分散」が小さいということは訪問シェアのバラつきが小さい、つまり、より多くの都道府県を訪問していることを意味します。

地方訪問

平均訪日回数トップ5か国は香港が8.8回、台湾が7.2回、韓国が6.4回、シンガポールが4.9回、ロシアが4.8回となります。何度も日本を訪れる国の人たちはゴールデンルート(東京、富士山、京都、大阪)では飽き足りず、地方観光に目を向けているのです。ただし、注意が必要なのはリピーター国の人々は地方へはレンタカーを借りて旅行している傾向があるという点です。

訪日回数

レンタカー

レンタカーは国際免許の取得や異なる交通ルールの理解などが難しく、本来外国人観光客に利用促進するものではないと私は思っています。実際、外国人旅行者全体ではレンタカー利用率はわずか9.0%(2019年)に過ぎません。公共交通機関の不便さをレンタカー以外の方法で補う方がより多くの観光客を地方に引きつけることができることは確実です。

さらにいえば、外国人旅行者のレンタカー利用率が増えれば、オーバーツーリズム問題が再燃するのは確実です。2019年に発刊された観光庁の「持続可能な観光先進国に向けて」における「地方自治体が課題をどのように認識しているか」という調査では「観光客のマイカーや観光バス等による交通渋滞」が38.4%と全項目でトップでした。地方は一車線の道も多く、複数車線がある都心部よりも交通渋滞リスクが大きいと考えられます。従って、オーバーツーリズム問題の観点でも外国人観光客に安易にレンタカー利用を促すことは愚策といえるでしょう。

また、先述したように、環境負荷の観点からも自動車以外の旅行手段を推進する方がいいでしょう。

不便さ解消のため、「観光客向けの巡回バス」はとても良いアイデアだと思います。自家用車観光に「観光客向けの巡回バス」を引くと日本人観光客の(3年間平均)宿泊数伸び率との相関係数はマイナス0.62からマイナス0.60に改善します。「観光客向けの巡回バス」の利用率が日本全体でわずか3.9%に過ぎないことを考慮すると不便さ解消に一定の効果があると考えていいと思います。新幹線や特急停車駅などからの送迎バス運行など交通の不便さを解消するなんらかの手段が必要となるのではないでしょうか。

なお、公共交通機関が少なく、交通が不便だからといって、観光バスを運行すればいいと考えるのは危険です。世界的に個性重視・多様性の時代であり、各人が自分好みの旅行をしたいというニーズへシフトしています。昭和時代の日本人のように温泉に社員全員で行くような団体旅行スタイルは廃れつつあります。実際、2014年と2019年を比較するとほとんどの国で団体ツアーの参加割合が減少しています。団体旅行を否定するわけではありませんが、トレンドに反することのない観光客誘致策が長期的に必要でしょう。しかし、多くの観光施設で「団体割引」が残っています。昭和の時代の団体旅行スタイルを払拭できていない証だと思います。

訪日観光客の団体ツアーの参加割合

次に、「顧客生涯価値:Life Time Value(LTV)」という考え方を提示したいと思います。ある顧客が一生のうちいくら金額を消費してくれるかというマーケティングにおける「お得意様」の考え方です。一般的に、新規顧客を獲得するコストは既存顧客との関係維持と比べ5倍かかると言われています。全てのビジネスで「お得意様」を大切にするのは当然のことです。

全体を「日本観光会社」とした場合、訪日回数と一回当たりの消費金額(2019年の観光庁「訪日外国人消費動向調査」のデータを使用)の乗数で訪日客のLTVは計算できます。その結果、1位香港、2位シンガポール、3位ロシアとなりました。果たして、「日本観光会社」は上位3か国の訪日客を「お得意様」として厚遇してきたでしょうか。そうでなかったならば、今からでも上位3か国の訪日客を地方観光活性化の起爆剤として捉え直す必要があるのではないでしょうか。

訪日観光客の1人当たりLife Time Value

 

9、ワーケーション、ブレジャー需要の取り込みは必須

働き方の多様化の中、ワーケーション(Work+Vacation)、ブレジャー(Business+Leisure)需要にも注目が集まっています。クロスマーケティングの2021年の調査では日本のワーケーション経験者は6.6%でした。今後ワーケーションを(再び)行いたいかについて聞いたところ、半数以上がまた「行いたい」と回答し、徐々に市場拡大が期待されます。

また、三菱総合研究所の2017年の調査ではブレジャー比率は世界、日本ともに海外出張者の52%となっています。ブレジャー旅行への転換率はカンファレンスが67%と最も多く、MICE(マイス:Meeting、Incentive tour、Convention/Conference、Exhibition/Eventの頭文字をとった造語)の推進が各国、各都市の重要な観光政策となっています。

こうしたワーケーション、ブレジャー需要の取り込みは地方観光活性化にとって大きなチャンスです。なぜなら、観光客の伸びと逆相関の関係にあった自家用車観光比率と日本人、外国人とも非観光客(観光目的が50%未満)の伸び率に逆相関性はみられないからです。

日本人の非観光客宿泊者増減

外国人の非観光客宿泊者増減

つまり、仕事なので不便さがあっても地方の目的地に行かざるを得ないということでしょう。公共交通機関を使わず、団体バスで移動していることも十分考えられます。従って、公共交通機関が少なく不便な地方の観光誘致は、ワーケーション、ブレジャー需要に対する情報発信強化がとても効果的と言えるでしょう。

 

10、地方観光活性化のアイデア

以上のことをまとめると地方観光活性化には、①そもそも交通の不便さの解消が大前提である、②外国人観光客はリピーター(香港、台湾、韓国、シンガポール、ロシア)とLTV上位国(香港、シンガポール、ロシア)を厚遇する必要がある、③ワーケーション、ブレジャー需要の取り込みが必須である、の3点が大切です。

上記3点の中でも交通の不便さ解消が最も大切です。魅力的な観光地を知っていても不便であれば旅行者はそこに「行きません」。「行けません」、が正しいかもしれません。JTBの「旅行年報」によれば、日本人旅行者の国内旅行の平均宿泊数はわずか1.85泊です。沖縄県(2.80泊)や北海道(2.37泊)という遠隔地では宿泊数が長めですが、1.5泊を下回る都道府県も少なくありません。そうした短い日程で多くの旅行者は時間がかかる不便な場所には行きたくないでしょう。誰もが無駄な時間を使いたくないのです。従って、交通の不便さ解消は必須だと思います。

なお、地方観光に関わる人たちには実際に地元の観光地を公共交通機関で廻るとどの程度時間がかかるのかを把握しておく必要があると思います。おそらく、普段の生活に自家用車を使っているため、地元の観光地の視察や看板設置などにも自家用車を運転して行っている方が大部分だと思います。それでは、旅行者目線での不便さ解消策を立案できないのではないでしょうか。先述の短い平均宿泊数を考慮しながら、観光客誘致を考えることが大切だと思います。

外国人向けにも訪日前の「交通情報」は不足していると言わざるを得ません。「訪日外国人消費動向調査」の「日本滞在中に役に立った旅行情報」で「交通情報」は1位でした。これは訪日前に「交通情報」を知らなかったのだが、日本に来てから「交通情報」を知ることができて役に立ったということだと思います。旅のルート造りのために、訪日前に知ることができる観光地へのアクセス情報を提供することが必要だと思います。

日本滞在中に役に立った旅行情報

先述の3点以外に私が考える地方観光活性化のアイデアを提示したいと思います。

①余っている土地を逆手にとる

地方観光地の不便さ解消は必須ではありますが、完全に都会並みの便利さを提供することは不可能でしょう。その際、地方の不利な部分を有利な部分に転換することも必要かと思います。多くの土地があることを利用し、グランピングポップアップホテルを造り、人を呼び込むのはいかがでしょうか。

グランピング

グランピングは「Glamorous(グラマラス)」と「Camping(キャンピング)」を組み合わせた言葉ですが、キャンプブームの中で、注目されています。キャンプはテント設営や食事の準備などが煩わしいですが、それらを施設側で用意し旅行者の不便さを解消するものです。

グランピング

ポップアップホテルは「突然現れ、消えるホテル」で、季節限定、期間限定のホテルです。雪国などでは夏限定ホテルという形で作れば、低コストでできるため好都合だと思います。

グランピング、ポップアップホテルともに、主に若者に人気があり、そのためだけにその場所に行く、という希少性を提供できます。不便な場所だからこそ提供できる宿泊形態であると言えるでしょう。

グランピング

古民家を改装して、古き良き日本を強調するホテル、旅館の建設も旅行客を引き付けると思います。こうした動きは既にありますが、より魅力的な地方観光のために強化が必要な動きだと私は思います。

古民家

観光地を回るだけではなく、グランピング、ポップアップホテル、古民家ホテルなど「宿泊すること」自体が旅になるという動きはリゾートだけのものではなくなってきています。

②ウォールアートを描く

地方には土地が多くあるため、地元のアーティストにウォールアートを描いてもらうのはいかがでしょうか。まだ売れていない地元のアーティストは作品発表の場になりますし、観光客集客にも繋がる可能性があります。ちなみに、インスタグラムではウォールアートのハッシュタグは15万件もあります。これは都道府県別の「旅行、観光」のハッシュタグと比較すると新潟県、福井県と同数の22,23位に相当します。ウォールアートはSNS上、相当強い関心度だと私は思います。

ウォールアート

岡山県直島町や青森県十和田市はアートの街として、観光客を惹きつけています。また、佐賀県多久市鹿児島県指宿市などではウォールアートでの町おこしを行っています。例えば、地方で寂びれたシャッター街となった商店街再生もウォールアートを描くことにより街の活性化に繋がるのではないでしょうか。

十和田

十和田

ウォールアート

地元にウォールアートを描くアーティストがいなければ、商標権・著作権フリーの「絵文字」をウォールアートとして描くのはいかがでしょうか。これなら、地元の中高生でも描けると思います。「絵文字」は外国人でも分かる日本文化です。「絵文字」で溢れる町ができれば町全体が明るくなるような気がします。

ウォールアート

③買い物難民と組み合わせる

旅行者の交通の不便さと買い物難民問題を同時に解消するアイデアはいかがでしょうか。地方の公共交通機関は一日5本程度の運行と頻度が少ない場所が多く、また、観光地から遠くにある鉄道駅やバス停も少なくありません。

田舎の駅

その鉄道駅やバス停から列車、バスの到着時間に合わせて、スーパーマーケットや食料品店を通るコミュニティバスなどミニバスを運行すれば、旅行者と買い物難民を同時に輸送できるため、地方財政に大きな負担をかけることなく不便さ解消に結び付くのではないでしょうか。コンビニエンスストアが少ない地方では旅行者にとってもスーパーマーケットや食料品店にミニバスが立ち寄ってくれれば水分補給などができるため有難いと思います。バスの中で日本人と外国人が会話すれば、とても良い国際交流にもなるのではないでしょうか。

日本の田舎

最後に

旅行者の視点からデータ分析を行い、私が考える地方観光の本当の問題点と改善のアイデアを書かせていただきました。本投稿をお読みいただき、私の分析にご興味いただいたなら、当ホームページの「お問い合わせ」からご意見ご質問を頂けますと有難く思います。よろしくお願い致します。

株式会社EDO KAGURA 代表取締役社長 山田真也

 

 

 

 

 

 

 

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