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10年後には日本の地方への旅行はできなくなる?(3)

10年後には日本の地方への旅行はできなくなる?(3)

 

目次

1:地方鉄道駅のバリアフリー化

2:地方鉄道駅のバリアフリー化遅れの原因

 

1:地方鉄道駅のバリアフリー化

日本の大型旅客施設(鉄軌道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル)のバリアフリー化は着実に進行しています。1日当たりの平均的な利用者数が3,000人以上の旅客施設では2020年度末に段差解消率は95.1%、視覚障害者誘導用ブロックの整備率は97.2%、障害者用トイレの整備率は92.1%と100%に近づいています。

 

1日当たり3,000人以上の利用者数の旅客施設のバリアフリー化の進捗状況(%)

旅客施設のバリアフリー化

出所:国土交通省

 

しかし、日本の鉄道駅全てでは「段差が解消されている駅」は2021年度末で50%(9,379駅中4,734駅)しかありません。都道府県別の「段差が解消されている駅」の割合では30%を下回る都道府県が22(全体の47%)もあります。特に、山口県が17%、鹿児島県が19%、青森県が20%など地方の低さが目立ちます。

 

段差が解消されている駅の割合(%)

1沖縄県100.0%
2東京都94.1%
3神奈川県88.2%
4大阪府83.4%
5埼玉県79.4%
6愛知県74.6%
7千葉県68.0%
8兵庫県66.3%
9京都府62.9%
10滋賀県56.8%
11宮城県56.1%
12奈良県50.8%
13福岡県49.7%
14広島県46.4%
15茨城県45.5%
16群馬県42.6%
17富山県42.1%
18岩手県40.9%
19岡山県40.6%
20福井県39.8%
21静岡県39.1%
22香川県36.9%
23熊本県35.4%
24長崎県35.0%
25山梨県34.2%
26栃木県34.2%
27岐阜県33.0%
28佐賀県32.9%
29福島県32.4%
30山形県31.1%
31鳥取県31.1%
32愛媛県27.4%
33三重県27.2%
34新潟県26.4%
35大分県25.3%
36北海道25.2%
37徳島県25.0%
38長野県24.8%
39和歌山県24.4%
40宮崎県22.4%
41島根県22.3%
42石川県22.2%
43秋田県21.4%
44高知県21.2%
45青森県20.1%
46鹿児島県18.5%
47山口県17.1%

出所:国土交通省

 

足腰の悪い高齢者、車いすなどを使う障害者、ベビーカーなどを使う子連れ家族などは「段差が解消されている駅」の割合の低さにより、地方へ鉄道で旅行することが困難であると考えられます。実際、乳幼児連れの家族旅行では、旅行先までの主な交通手段として「列車」を利用した割合が17.4%と、利用者全体の27.3%を大きく下回りました(2019年)。旅行先での主な交通手段として「列車」を利用した割合も18.6%と、利用者全体の29.7%を大きく下回りました。

階段

また、2018年の国土交通省による車椅子使用者へのアンケート「鉄道における車椅子利用環境改善に向けた調査(複数回答)」では、「鉄道利用時の困りごと」の主な内容は「駅がバリアフリー対応ではなかった」が35%、「バリアフリールートが大回りだった」が29%と、未だに「困りごと」の上位にあげられます。しかも、このアンケートの回答者184名のうち、関東地方、近畿地方、中部地方の回答者が78%です。「段差が解消されている駅」の割合が高い3大都市圏の回答者が多いことを考えると、鉄道利用時の全国における「困りごと」の上記項目の回答率はもっと高い可能性もあります。

車椅子

2:地方鉄道駅のバリアフリー化遅れの原因

地方の鉄道駅の段差が解消されてこなかった原因は、高齢化とそれに伴う人口減少です。都道府県別の65歳以上の高齢者の割合と「段差が解消されている駅」の相関性は極めて高い状態です。また、都道府県別の人口の増減率と「段差が解消されている駅」の相関性も極めて高いといえます。日本の地方では足腰が弱った高齢者が駅の段差の存在により鉄道を利用しなくなるとともに、人口減少による収益悪化もあり、段差解消への投資ができなくなったといえます。

 

都道府県別の駅の段差解消率と人口増減率(2020年/2000年)

駅の段差解消率と人口増減率

出所:国土交通省、国立社会保障・人口問題研究所

 

しかも困ったことに、駅の段差解消率が低い都道府県ほど将来の人口減少率が深刻です。例えば、先述の山口県(段差解消率17%)、鹿児島県(同19%)、青森県が(同20%)の2015年から2045年までの人口減少率予想はそれぞれ26%、27%、37%と、20%を大きく超えます。従って、今後とも高齢化とそれに伴う人口減少という構図は、変わらないどころかますます悪化することになるでしょう。

都道府県別駅の段差解消率と人口増減率予想(2045年/2015年)

段差解消率と人口増減率(2045年/2015年)

出所:国土交通省、国立社会保障・人口問題研究所

 

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