10年後には日本の地方への旅行はできなくなる?(2)
目次
1:乗合バス事業者の現状
2:廃止された乗合バス路線
1:乗合バス事業者の現状
乗合バスとは、不特定多数の旅客を運送するバスのことです。乗合バスには都市間を走行する高速バスや定期観光バスも含まれますが、ここでは路線バスについて述べます。
乗合バスは都市部では堅調な需要があるものの、都市部以外では高齢化による人口減少や自家用車による移動の増加(モータリゼーション化)による利用者減少が続いています。2003年から2019年までで19%も利用者が減少しました。この状況は地域鉄道と同様です。
一般路線バスの輸送人員数(百万人)
出所:日本バス協会
利用者減少などにより、地方の乗合バス事業者の損益は赤字状態が続いており、赤字事業者の割合は常に80%を超えている状況です。
赤字の乗合バス事業者割合
出所:日本バス協会
2:廃止された乗合バス路線
こうした厳しい状況により、地方の鉄道路線同様に、地方の乗合バス路線の廃止も続いています。2010年から2020年までに廃止路線は累計13,845km(年平均1,259km)にもなりました。同時期の鉄道路線の廃止は累計407kmでしたので、バス路線の廃止がいかに深刻かが理解できると思います。
2010年以降に廃止された路線バスの営業距離(km)
出所:国土交通省
ただし、乗合バス路線全体の営業許可された距離は日本全体で58.8万kmです。そのため、廃止路線は2010年からの累計で全体の2.4%でしかありません。一方、乗合バス路線には堅調な需要がある都市部の路線や高速バスの路線なども組み込まれていることを考えると、地方の路線バスの廃止路線の影響は大きいと考えていいでしょう。日本の本州の長さ約 1,500kmの8割以上の路線距離(年平均1,259km)が毎年廃止されています。前回にも述べた通り、いずれ「日本の地方への旅行はできなくなる」というのは決して大げさなことではないのです。