今回は「不確実性」解消のための「選択肢の絞り込み」の方法をご紹介します。
もちろん、旅行先の選択肢をどう絞り込むかは各人の興味によって異なります。テーマパークなど特定の場所に行きたい人は最初から旅行先を絞り込んでいるため、ここでの対象にはなりません。ここではより多くの人に役立つ方法をご紹介します。あくまでも、漠然と旅行に行きたい、と考えている人向けの方法論となります。
皆さんは旅行先はどのように決めていますか?行きたい観光地、行きたい温泉、行きたいホテル・旅館、食べたい食事などいろいろな観点から旅行先を選んでいると思います。ただし、選択肢が多過ぎて困るという旅行者が日本でも世界でも多いことは前回指摘しました。
例えば、温泉だけでも、日本で3,155ヶ所(2015年の統計:環境省)もあります。「温泉に行きたい」といっても、全ての選択肢を検討するのは非現実的です。
https://www.env.go.jp/press/files/jp/106545.pdf
では、私が実践している旅行先の絞り込み方法はどのようなものと思いますかか?それは以前にもご紹介しましたが、「魚介類の旬」による旅行先の絞り込みです。「魚介類の旬」による絞り込みでは内陸の観光地に不利です。しかし、沿岸部の旅行先を絞り込んだ後に、その近隣の内陸の観光地を訪問するという方法により、内陸部である不利を解消できます。また、魚介類の旬による絞り込みが一巡した後には、内陸部の不利がなくなる「野菜」や「果物」の旬による絞り込みも行いたいと考えております。
では、なぜ、私が「魚介類の旬」による絞り込みが有効と考えたのか、ご説明します。詳細は後述しますが、結論としては、①日本の旅行で「魚介類」は多くの人の関心が高いこと、②季節や地域まで絞り込みができるため、旅行先を大きく絞ることができること、③旅行先の決定に魚介類の旬を基準にする旅行者が少ないと推定されるため、観光地が混雑しないこと、などが理由です。
まず、日本の旅行の目的に「食べ物」を挙げる旅行者はとても多いです。2019年に日本を訪問した外国人旅行者への調査(観光庁)では訪日前に期待していたことの1位は「日本食を食べること」で27.6%、2位が「自然・景勝地観光」14.2%、3位が「ショッピング」11.3%でした。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001345781.pdf
日本人が国内旅行で「最も楽しみにしていたこと」という調査(JTBの旅行年報2020)でも「おいしいものを食べること」が18.7%で1位でした。以下、2位「温泉に入ること」15.4%、3位「自然景観を見ること」12.2%となります。
https://www.jtb.or.jp/wp-content/uploads/2020/10/Annual-Report-all-2020.pdf
従って、日本国内の旅行情報を提供するためには、訪日客向けでも、日本人向けでも「食べ物」を切り口にすることが最も多くの旅行者の興味に合致すると考えました。
なお、どのような「食べ物」に興味があるのでしょうか。私たちは、「魚介類」は外せないと思います。訪日客に「一番満足した飲食」との質問では、1位が「肉料理」27.5%、2位が「ラーメン」19.7%、3位が「寿司」14.5%、4位が「魚料理」12.7%となりました(観光庁)。寿司と魚料理を合わせると27.3%になり、1位の肉料理と同等になります。
また、訪日客が一番満足した飲食の理由(複数回答)では、1位が「美味しい」93.0%、2位が「食材が新鮮」45.4%、3位が「伝統的・日本独特」24.4%となりました。1位の「美味しい」はさておき、2位と3位の解答には「魚介類」がある程度想定された解答と見ていいでしょう。
日本人向けの調査では「おいしいものを食べること」がどの食べ物を指しているのか分かりません。ただし、都道府県別の調査を見ると「魚介類」への興味が高いということが推定されます。
「おいしいものを食べること」が国内旅行の「楽しみにしていたこと」の1位(18.7%)でしたが、内陸県への旅行では「おいしいものを食べること」への興味が下がるためです。長野県(8.1%)、群馬県(9.7%)、奈良県(10.2%)、山梨県(10.5%)、滋賀県(12.7%)、栃木県(12.8%)、岐阜県(16.0%)、埼玉県(17.9%)と「おいしいものを食べること」を「楽しみにしていたこと」に挙げた回答が、8つの内陸県全てで全国平均18.7%を下回ります。従って、国内旅行先での「おいしいものを食べること」に多くの旅行者は「魚介類」を想定しているとみていいのではないでしょうか。
それでは、「魚介類の旬」での絞り込み方法をご説明します。まず、漁獲量が比較的多い87種類の魚介類の旬と都道府県別漁獲量を調べました。各魚介類の漁獲量でトップ5の都道府県が、その魚介類の旬の月に1ポイント獲得できることとしました。例えば、鮭で漁獲量トップ5の北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県は鮭の旬である9-11月にそれぞれ1ポイントずつ獲得します。こうして、算出したポイントを合算することにより、各月の都道府県ランキングを作成します。この結果、いつ、どこに行けば、より多くの種類の魚介類を食べることができるかが判明しました。
その後、絞り込まれた都道府県で近接する観光地を選ぶことにより、旅行ルートが作成されることになります。このルート作成には、調査した87種類より漁獲量が少ない「PRIDE FISH」282種類(全国漁業協同組合連合会が選定)や農林水産省の「郷土料理百選」、「御当地人気料理特選」23種類の情報も参考にしています。これらの食情報の総合分析は、より美味しい食べ物を食べることができる確率を上げるためのものです。
では、次回、観光地の選び方をご紹介します。いよいよ「不確実性の解消」です。