外国人旅行者向けラーメンの食べ方(中編)
目次
1、紹介文
2、ラーメンの分類
2-1、醤油ラーメン
2-2、塩ラーメン
2-3、味噌ラーメン
2-4、豚骨ラーメン
2-5、鶏白湯ラーメン
2-6、つけ麺
2-7、油そば
3、トッピングの種類
4、ラーメンの注文方法
5、ラーメン消費金額ランキングと上位都市の御当地ラーメン
2-4、豚骨ラーメン
豚骨ラーメンは「醤油」、「塩」、「味噌」という調味料を名前に冠したラーメンと異なり、スープのだしを取る豚骨を名前に冠したラーメンです。長時間強火で煮た豚骨から出る脂質とゼラチン質が乳化した白濁スープを使用します。
豚骨ラーメンは博多ラーメンや長浜ラーメン(ともに福岡市)といわれることもありますが、発祥は福岡県久留米市とされます。1937年に久留米市の「南京千両」が「関東地方で流行していたメンマ入りの支那そば」と「長崎ちゃんぽんの豚骨ベースのスープ」を元に豚骨ラーメンを開発したそうです。
豚骨ラーメン(福岡県 博多一双)
豚骨ラーメンは「豚骨臭」がきついラーメン店もあることから、好き嫌いの差が激しいラーメンといえます。もちろん、宗教上、イスラム教徒は食べられません。「豚骨臭」がきついことから、豚骨ラーメンは「こってりスープ」のイメージが強いですが、「あっさりスープ」も存在します。
また、麺は素麺のような極細ストレート麺であることがほとんどで、注文時に麺の硬さを選ぶ必要があります。麺の硬さは硬い方から「針金」「バリカタ」「カタ」「普通」「やわ」「バリやわ」などといいます。豚骨ラーメンを食べる多くの人が「バリカタ」や「カタ」などの硬めの麺を選びます。
豚骨ラーメンのトッピングとしては豚チャーシュー、キクラゲ、紅ショウガ、辛子高菜、ゴマが良く合います。紅ショウガ、辛子高菜、ゴマは無料で提供するラーメン店も多くあります。一方、紅ショウガ、辛子高菜を入れることにより、豚骨ラーメンの味が大きく変わることから、提供しない店も存在します。
豚骨ラーメン(福岡県 長浜ナンバーワン)
また、「替え玉」というシステムが豚骨ラーメンの特徴の一つです。ラーメン店において、麺の量は注文時に「並」か「大盛り」を選ぶパターンがほとんどですが、豚骨ラーメン専門店では、食べている途中に「替え玉」という麺のお替りを注文するシステムを採用する店が多いです。「替え玉」でも先述のように麺の硬さを選びます。なお、「替え玉」麺を食べる際にトッピングの紅ショウガや辛子高菜を初めてスープに入れることにより、一杯目との味の変化を楽しむ人も多いです。
「御当地ラーメン」としては、発祥の地である久留米ラーメンや博多ラーメン、長浜ラーメン、熊本ラーメン(熊本県)、宮崎ラーメン(宮崎県)、鹿児島ラーメン(鹿児島県)などがあります。ほとんどが九州のラーメンであることが特徴です。
久留米ラーメン(福岡県 道 麺志)
なお、豚骨醤油ラーメンなど派生形ラーメンが多く存在することも豚骨ラーメンの特徴です。豚骨醤油ラーメンの「御当地ラーメン」には和歌山ラーメン(和歌山県)、徳島ラーメン(徳島県)、家系ラーメン(神奈川県)などがあります。
豚骨醤油ラーメン(福岡県 大平山 門司港本店)
徳島ラーメン(徳島県 宝ラーメン)
2-5、鶏白湯ラーメン
鶏白湯ラーメンは鶏ガラや丸鶏などを長時間煮込んで作る白濁色スープを使用したラーメンです。更に鶏の足(モミジ)、豚骨、野菜などを加え、より濃厚なスープを提供するラーメン店も多くあります。
鶏白湯ラーメン(東京都 鶏そば 三歩一)
鶏白湯ラーメン(東京都 鶏豚骨 一學)
更に濃厚でクリームポタージュのようなスープの鶏白湯ラーメンもあります。「鶏ポタ系ラーメン」とも呼ばれており、味と見た目の良さから女性にも人気です。
鶏白湯ラーメン(東京都 ふく流らーめん 轍)
鶏白湯ラーメン(東京都 蔭山)
鶏白湯スープ自体は、古来より中華料理にもあることから、特段珍しいスープではありません。私は台湾の台北市にある「驥園川菜餐廳」の濃厚な「砂鍋土鶏」のスープが大好きですが、濃厚な鶏白湯ラーメンのスープと味の傾向が似ています。
日本のラーメン界では鶏白湯ラーメンが有名になったのは2005年以降と言われており、先述の4種類のラーメンと比較し、かなり新しいタイプのラーメンです。
鶏白湯ラーメンのトッピングとしては鶏チャーシューが良く合います。あっさり系スープの鶏白湯ラーメンには柚子胡椒を提供するラーメン店もあります。
鶏白湯ラーメンは主流になってからの歴史が短く、「御当地ラーメン」と言えるほどの有名ラーメンはないようで、個別の店舗や系列店が美味しさを競い合っている状態です。
鶏白湯ラーメン(東京都 鶏そば かぐら屋)
2-6、つけ麺
つけ麺は、茹でてから冷水で締めた麺を別の器に盛った味の濃いつけ汁につけながら食べるラーメンです。「もりそば」、「つけそば」などと呼ばれることもあります。
麺が温かい状態で提供されるものを「あつ盛(あつもり)」といい、冬によく食べられます。
つけ麺(東京都 つじ田)
東京都の「大勝軒」が1955年に開発・商品化したと言われています。2000年に埼玉県川越市のラーメン店「頑者」が魚粉、極太麺、濃厚魚介スープという新しいつけ麺の流れを作り、つけ麺が全国的にブームとなりました。
このため、つけ麺のつけ汁(スープ)は濃厚魚介スープが多いですが、味噌味や辛味噌味など様々な味があります。
つけ麺を提供する店では、麺を食べ終えたつけ汁に熱いスープを足す「スープ割り」というシステムが定番のようになっています。
つけ汁は一般的なラーメンのスープより味が濃い為、魚介や豚骨・鶏がらなど店独自のスープで割り、スープを味わうのです。
「スープ割りをお願いします」と客がオーダーする必要があります。
つけ麺(東京都 俺の空)
つけ麺専門店では「並盛」「中盛」「大盛」など、麺の量にかかわらず同一価格で提供する店が多いようです。
つけ麺のトッピングは豚チャーシューや鶏チャーシュー、味玉などです。つけ汁の器は一般的なラーメンより小ぶりな為、多くのトッピングを注文すると麺をつけにくくなるという欠点があります。その為、トッピングを別皿で提供する店もあります。
つけ麺は広まってからの歴史が浅いせいか「御当地つけ麺」といえる地域特色はまだないようです。各地のつけ麺人気店がその個性と味を競っています。
つけ麺(東京都 塩つけ麺 灯花 )
2-7、油そば
油そばの食べ方は特殊です。どんぶりの底に入ったゴマ油、醤油ベースのタレの上に麺を入れ、辣油、酢などの調味料をかけ、麺に絡めて食べます。辣油、酢以外にマヨネーズをかける店もあります。
油そばは中国大陸のまぜそばである「拌麺(ばんめん)」に似た麺料理です。ただし、日本の油そばは拌麺よりも具も麺のボリュームもあります。
油そば(東京都 東京麺珍亭本舗)
油そばの発祥は1950年代の東京都多摩地域とされています。油そばは安価でボリュームがあることから、多摩地区にある一橋大学や亜細亜大学などの学生向けに人気を博し、全国に広がったと言われています。
油そばのトッピングは刻んだ小ネギや半熟卵が一般的です。メンマ、カイワレ大根などを提供する店もあります。
油そば(東京都 油そば専門店GACHI)
油そばの「御当地ラーメン」としては台湾まぜそば(愛知県)が挙げられます。台湾まぜそばは2008年に名古屋市の「麺屋はなび」が開発したもので、台湾の麺料理「担仔麺」をルーツに持つ台湾ラーメンの汁無しバージョンです。ただし、台湾人からは「台湾ラーメン」、「台湾まぜそば」ともに、台湾の「担仔麺」とは全く違うという意見が多くあります。