野岩鉄道と外国人観光客誘致について意見交換
目次
1:外国人観光客誘致について意見交換
2:野岩鉄道の魅力
3:野岩鉄道周辺の外国人観光客の国籍
1:外国人観光客誘致について意見交換
先日、野岩(やがん)鉄道様(以下、敬称略)と外国人観光客誘致について、野岩鉄道本社( 栃木県日光市藤原)にて意見交換をさせて頂きました。野岩鉄道は新藤原駅と会津高原尾瀬口駅(営業距離30.7km)を結ぶ鉄道会社です。新藤原駅では東武鉄道と会津高原尾瀬口駅では会津鉄道と接続しています。
2019年の国土交通省「鉄道統計年報」によると野岩鉄道の定期券利用者(輸送距離ベース)は1.7%しかありません。つまり、大半を定期券利用者以外の観光客に依存している鉄道会社と言えます。そのため、観光客誘致は必須です。しかし、2020年以降の新型コロナウィルスの流行により、観光客が減少し、その回復が喫緊の課題です。
当社は外国人観光客向けに衣類レンタルと旅行前コンシェルジェを行う会社として、野岩鉄道にお役になれることはないかと様々なデータを用いて、ご提案をさせて頂きました。
まず最初に、駅の段差解消率(以下、「バリアフリー化率」)と宿泊施設の稼働率には非常に高い相関性(相関係数72%)があることをご説明しました。また、「バリアフリー化率」は旅行先における旅行手段としての鉄道旅行割合とも高い相関性(同81%)があり、日本人宿泊者数伸び率(2007年-2019年)とも高い相関性(同65%)があることをご説明しました。私もこうしたデータを分析する前はバリアフリー化率と宿泊者数や旅行者数に高い相関性があるとは思いませんでした。
注:鉄道網がない沖縄県を除く46都道府県のデータ
出所:国土交通省「令和3年度末 都道府県別の段差解消への対応状況について」、「宿泊統計(2019年)」
注:鉄道網がない沖縄県を除く46都道府県のデータ
出所:国土交通省「令和3年度末 都道府県別の段差解消への対応状況について」、JTB旅行年報2020(2019年の旅行データ)
注:鉄道網がない沖縄県を除く46都道府県のデータ、宿泊者数伸び率は2019年と2007年の比較
出所:国土交通省「令和3年度末 都道府県別の段差解消への対応状況について」、「宿泊統計」
観光客増のためには「バリアフリー化率」を向上することは必要だと思いますが、投資負担があり、簡単にはできません。そのため、「段差」を乗り越えられる旅行者を増やし、投資余力を増し、「バリアフリー化率」を向上させるという順序が必要です。
「段差」を乗り越えられる旅行者とは荷物が少ない旅行者です。当社が進める衣類レンタルにより、荷物を減らし、「段差」を乗り越えられる旅行者を増やすことは可能であると考えています。また、高齢者、障害者の荷物の負担減により、高齢化社会でも観光客数を維持できる社会に貢献できると考えています。
世界の旅行者は「ノスタルジック」で「地域志向」な旅を志向しているからです。また、「馴染みのない場所」に行きたいとの志向もあります。こうした旅行者の嗜好の変化は地方観光や地方鉄道会社にとって、追い風です。
出所:Booking.com「2023 Travel Prediction」
しかし、外国人旅行者の約半分は地方の公共交通機関に困っており、92%は不便と感じています。さらに、施設のスタッフとのコミュニケーションや多言語表示にも困っています。
「公共交通機関の利用」で困った公共交通機関
出所:観光庁、2019年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に 関するアンケート」調査結果
便利と感じたこと(都市部・地方部両方訪問した人)
出所:観光庁、2019年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に 関するアンケート」調査結果
そのため、「身軽な旅行者」を増やすとともに、外国語での情報発信や乗り換え情報などの提供による利便性向上により、野岩鉄道を利用する外国人旅行者は増えると当社では考えています。
2:野岩鉄道の魅力
当社が考える野岩鉄道の最大の魅力は多くの観光地に挟まれていることです。南は鬼怒川温泉、日光、北は尾瀬、大内宿、会津若松があります。新藤原駅は鬼怒川温泉から10分弱、東武日光駅から1時間弱です。また、会津高原尾瀬口駅は尾瀬までの直行バスがあり(檜枝岐まで会津バスで75分)、大内宿・会津若松から2時間強の場所にあります。
また、その沿線は自然に囲まれ、多くの撮影スポットがあります。さらに、「三依渓流釣り場」など釣りやキャンプを楽しめるスポットもあります。こうしたことから、大観光地を周遊し、その間、アウトドアを楽しみたい観光客には最適な鉄道と言えるのではないでしょうか。
野岩鉄道周辺観光地に滞在する外国人観光客の国籍は台湾が最多です。また、台湾と同じ繁体中文を文字とする香港人も多く、特に、鬼怒川温泉がある旧藤原町や会津若松では台湾と香港で半分前後を占めます。そのため、繁体中文による情報発信や掲示が不可欠です。
出所:日光市観光客入込数・宿泊数調査結果
出所:日光市観光客入込数・宿泊数調査結果
出所:会津若松市