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福島県の地方鉄道①(阿武隈急行、福島交通飯坂線)

福島県の地方鉄道①(阿武隈急行、福島交通飯坂線)

目次

1:阿武隈急行
2:福島交通飯坂線
3:飯坂温泉
4:鉄路と生きるシンポジウム
5:JR磐越西線
6:一日目夕食
7:JR只見線
8:早戸温泉つるの湯
9:鶴ヶ城
10:さざえ堂
11:二日目夕食

新幹線

1:阿武隈急行

5月下旬に福島県へ研修旅行をしました。主目的は、福島民報社主催の地方鉄道の在り方を考える「鉄路と生きるシンポジウム」への出席です。

早朝、上野駅から福島駅へ新幹線で向かいました。東北新幹線や上越新幹線などJR東日本の新幹線はほとんどが上野駅に停車します。上野駅は日本の新幹線で唯一、地下の停車駅となっており、たまに新幹線の上野駅を使うと新鮮に感じます。

上野駅で「万かつサンド パンダパッケージ」版を購入し、福島駅までの新幹線の中で朝食として頂きました。「パンダパッケージ」は上野動物園内の売店と上野駅限定販売のようです。カツサンドと一緒に飲んだのは炭酸コーヒー「Gassata/ガッサータ」です。私は炭酸コーヒーを初めて飲みましたが、かなり気に入りました。今後、炭酸コーヒーは流行るのではないでしょうか。

万かつサンド パンダパッケージ

万かつサンド パンダパッケージ

Gassata/ガッサータ

福島駅に到着し、福島交通飯坂線に向かうと阿武隈急行の車両が停車していました。阿武隈急行は福島県伊達市に本社がある地方鉄道です。福島駅(福島県)と槻木駅(宮城県)間の54.9kmが営業距離となります。阿武隈急行は地方鉄道会社としては珍しく売上の100%が鉄道事業です。多くの鉄道会社同様に、赤字決算です。近年、阿武隈急行は多くの災害(2011年東日本大震災、2019年東日本台風、2022年福島県沖地震)にも見舞われてきました。

政宗ブルーライナー

福島駅に停車していた車両は「政宗ブルーライナー」でした。福島県伊達市がアニメ制作会社福島ガイナックスと製作した、ご当地アニメ「政宗ダテニクル」のラッピングトレインです。私は「政宗ダテニクル」を全く知らないのでなんとも言えませんが、伊達市商工産業課によると「政宗ダテニクル」の上映により、「九州や四国などから訪れる人がいたことは事実」だそうです。また、アメリカの企業の目にとまり、海外進出のオファーを受けたようです。伊達市役所では「政宗ダテニクル」の婚姻届も受理しています。伊達市は「政宗ダテニクル」を活用した観光まちづくりにかなり本気です。

残念ながら、今回は時間がなく、阿武隈急行に乗車できませんでした。

政宗ブルーライナー

政宗ブルーライナー

2:福島交通飯坂線

福島駅から福島交通飯坂線に乗り、飯坂温泉に行きました。飯坂線の車内には「ゆ」と記された暖簾が掛けられていました。福島駅から乗車してすぐに温泉気分が高まります。

福島交通飯坂線

福島交通はバス事業が主体の会社で赤字(2019年度)ですが、飯坂線は黒字(同)です。今回、私が乗車した際も席は7割以上埋まっていました。飯坂温泉への訪問客の効果が大きいのでしょうか。

福島交通飯坂線

なお、飯坂線の営業路線は9.2kmと短く、始発の福島駅から終点の飯塚温泉駅まで乗車時間はわずか23分です。路線のほとんどが住宅街を走る列車なので、車窓からの景色をそれほど楽しめません。

福島交通飯坂線

3:飯坂温泉

飯坂温泉は、日本武尊(ヤマトタケル)が温泉に浸かり元気になったという伝説に登場します。2世紀頃からの歴史を有する日本を代表する古湯です。松尾芭蕉も奥の細道で飯坂温泉に行ったことを記しています。ヘレン・ケラーは2度も訪れているそうです。

飯坂温泉駅を下車するとすぐに温泉街です。東京からでも新幹線と飯坂線を乗り継ぐと約2時間半で到着します。私の訪問時には外国人観光客を見かけませんでしたが、飯坂温泉のHPは英語、繁体中文、簡体中文、韓国語、タイ語、ロシア語、フィンランド語と日本語以外に7か国語もの表示があります。外国人観光客誘致にとても努力していることが伝わってきます。

飯坂温泉の魅力は9つの共同浴場で、特徴はお湯が熱いことです。私は「波来湯」、「鯖湖湯」、「切湯」という3ヶ所の共同浴場を利用しました。源泉温度はそれぞれ48.8℃、51.0℃、60.0℃です。長時間浸かれる温度ではありませんでしたが、それでも不思議なことに浸かると爽快感があり、疲れが取れた気がしました。飯坂温泉は私がこれまで訪問した温泉の中でもトップクラスの素晴らしい温泉だと思います。

「波来湯」は約1,200年の歴史がある温泉です。2011年に建て替えられたので、とてもきれいな共同浴場です。入浴料は他の共同浴場が200円の中、「波来湯」だけ300円です。熱い湯と温い湯の浴槽があるため、熱いお湯が苦手な方も利用しやすい温泉です。

飯坂温泉

「鯖湖湯」は飯坂温泉で一番古い湯です。明治時代の共同浴場を1993年に再現した、とても風情ある外観です。「鯖湖湯」の天井は高く、外光も浴室内に入る構造なため、開放感がある素敵な温泉でした。

飯坂温泉

飯坂温泉

「切湯」は非常に小さな浴槽がある共同浴場らしい素朴な造りです。お湯が熱すぎて浸かるのはかなり厳しい温泉です。しかし、地元の方々は熱いお湯が気にならないようで、平然とお湯に浸かっていました。

飯坂温泉

なお、「1日フリーきっぷ(800円)」を購入すると飯坂線(福島駅往復740円)の乗降自由に加え、9つの共同浴場に入湯できるため、1つ以上の共同浴場を使うならかなりお得です。

 

4:鉄路と生きるシンポジウム

飯坂温泉から福島市内へ戻り、昼食後に福島民報社が主催する地方鉄道の在り方を考える「鉄路と生きるシンポジウム」へ出席しました。

蕎麦

斉藤鉄夫国土交通大臣や内堀雅雄福島知事もパネルディスカッションに登壇するなど、活気があるものでした。大臣、知事ともにユーモアを交えた堅苦しくない議論が印象的でした。

只見線地域コーディネーターの酒井治子さんや、只見線全国高校生サミットプレゼンテーション大会で最優秀賞に選ばれた会津高校の安西翔太郎さんと渡辺隼太朗さんのプレゼンテーションもありました。

各プレゼンテーターたちの堂々とした意見表明や各登壇者のとても活発な議論が印象的でした。一人一人が鉄道の意義を再認識して積極的に利用する「マイレール」意識を持つことが重要で、そのためには積極的な情報発信が必要とのことでした。

各出席者が指摘・認識していましたが、高齢化による人口減は厳然たる事実です。福島県の人口は2000年から2020年にかけて13.8%減と、日本全体の0.6%減を大きく上回っています。更に2020年から2045年にかけて、福島県の人口は大幅減少(28.3%減)すると国立社会保障・人口問題研究所は予想しています。

このように、人口減少により縮小するパイを奪い合うこととなる日本人乗客の増加は簡単ではありません。従って、外国人観光客の誘致が必要ではないでしょうか。ただし、外国人観光客の誘致については今回のシンポジウムでは全く触れられませんでした。福島県内の鉄道の外国語表示の少なさとともに、外国人観光客誘致に対する積極的な姿勢は残念ながら感じられませんでした。なお、観光庁の宿泊統計によると福島県の外国人宿泊者数(2019年)は都道府県別で40位でした。

また、全ての出席者が認識している高齢化に関し、必要とされるバリアフリー化についても言及はありませんでした。国土交通省によると福島県の段差解消駅の割合は32%で、全国平均の52%を大きく下回ります。一方、福島県の高齢化率(65歳以上の人口割合)は32%で、全国平均の29%を上回ります。高齢化が進む一方でバリアフリー化が低いという点と、その改善が乗客増に結び付くという視点が欠けていると言わざるを得ません。

段差解消駅

また、鉄道が「地域の足」であるとの意見も聞かれました。特に、自動車を運転できない学生にとっては間違いなく「地域の足」でしょう。しかし、各地で実証実験が始まっている自動運転車が進展すると、鉄道が「地域の足」であるとの認識も変わるかもしれません。従って、(自動運転車を含む)自動車ではなく、鉄道でしか提供できない魅力を掘り起こす必要があるのではないでしょうか。

鉄道でしか提供できない魅力は、道路からではなく鉄路からしか見られない絶景の発信や、自動車では揺れるために難しい駅弁などの飲食を鉄道内で積極的に推奨・推進するなどが候補として挙げられます。

自動運転

 

5:JR磐越西線

「鉄路と生きるシンポジウム」の聴講を終え、福島駅から会津若松駅へ向かいました。福島駅から郡山駅までは新幹線、郡山駅から会津若松駅まではJR磐越西線(ばんえつさいせん)で移動しました。

福島駅では東北新幹線と山形新幹線の連結作業を初めて見ることができました。

東北新幹線と山形新幹線の連結作業

また、郡山駅では名物駅弁の「海苔のりべん」を初めて食べました。「海苔のりべん」はJR東日本が開催している「駅弁味の陣」で2018年の駅弁大将軍(グランプリ)を受賞した駅弁です。ご飯の上には「海苔」と「おかか」、おかずは玉子焼き、焼鮭と非常にシンプルな駅弁ですが、味は確かにおいしかったです。個人的には「おかか」とご飯が特に美味しかったです。なお、JR磐越西線の終点(私が今回乗車した列車の場合)である会津若松駅でも「海苔のりべん」は販売されていました。

海苔のりべん

海苔のりべん

JR磐越西線は福島県郡山駅と新潟県新津駅を結ぶ営業距離175.6kmの路線です。ただし、運行される列車の大半は郡山駅と会津若松駅間の運行です。

磐越西線

JR東日本は、会津若松駅から五泉駅(終点の新津駅から4つ手前の駅)までを「乗客数が少ない路線」として開示しています。2021年度における会津若松駅から五泉駅間の運輸収入1.54億円に対し、営業赤字は33.37億円という信じられないほどの惨状でした。また、国鉄から民営化された初年度である1987年度から2021年度までの同区間の乗客数は74%減(1日当たりの乗客数が9,354人から2,395人へ減少)という厳しい状況です。日本の地方鉄道の厳しさをJR磐越西線の厳しい営業成績があらわしています。

磐越西線

磐越西線

6:一日目夕食

会津若松駅に到着しホテルにチェックインした後、「麦とろ」という居酒屋で夕食を食べました。「麦とろ」は高齢のご主人がお一人で店を運営していました。私は自然薯(じねんじょ)の山かけ、わらび、ニシンの山椒煮、馬刺しを頂きました。自然薯、わらびはご主人が山で採ってきた地物、ニシンの山椒漬け、馬刺しは会津若松の郷土料理です。

とろろ

わらび

ニシンの山椒漬けは、江戸時代に北海道で獲れたニシンを乾燥させた「みがきニシン」を日本海経由で会津若松へ輸送されたことが始まりです。みがきニシンは臭みがあるため、さわやかな山椒の葉を合わせることによって臭みを消してできた料理です。いくらでも食べられるくらいとても美味しい料理でした。ニシンの山椒漬けは農林水産省選定の「郷土料理百選」、「うちの郷土料理」にも掲載されています。

麦とろ

会津若松の馬肉文化は戊辰戦争(1868年-1869年)の際に、負傷者に馬肉を食べさせたことが始まりのようです。馬刺しは会津若松に来た力道山が「からし味噌」をつけて生の馬肉を食べたのが始まりです。馬刺しも「うちの郷土料理」に選ばれています。

馬刺し

なお、「麦とろ」のご主人は猟師でもあり、仕留めたツキノワグマの足を見せてくれました。ご主人によると山の神様であるツキノワグマを触るとその後に「いいこと」があるそうです。実際に、次の日に私は「いいこと」がありました。

ツキノワグマの足

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