外国人旅行者の日本旅程作成ストレスの大きさデータ化
目次
1:家事の時間比較
2:可処分時間に対する旅程作成時間の割合
3:日本旅行特有の問題
4:旅行目的の変化
1:家事の時間比較
Hotels.comによると、世界のミレニアル世代(一般的に1981年~1996年に生まれた世代のこと、27歳~42歳に該当)の旅行者のうち42%が、『人生における大きなストレスの1つ』として、「旅行の事前計画」を挙げています。今回、この理由を探りたいと思います。
まず、世界各国の家事の時間を調べました。調査対象は2019年の訪日客数上位30か国からデータが取れる19ヵ国としました。World Development Indicatorsによれば、『無償の家事・介護に費やした時間の割合(Proportion of time spent on unpaid domestic and care work)』は、女性ではメキシコ、イタリア、スペイン、男性ではスウェーデン、ニュージーランド、メキシコが上位3ヵ国となりました。なお、このデータは各国により開示年数にばらつきがあるため、2010年~2019年の平均時間を使用しました。
1日24時間を労働時間8時間、睡眠時間8時間、余暇時間8時間と3等分し、余暇時間8時間に対する無償の家事・介護に費やした時間の割合を計算すると、メキシコの女性は86%の時間を家事・介護に費やしていました。
無償の家事・介護に費やした時間と余暇時間8時間に対する割合(女性)
Hours Portion against spare time Mexico 6.9 86% Italy 4.9 61% Spain 4.5 57% Russian Federation 4.4 55% New Zealand 4.3 54% Switzerland 4.0 50% Germany 3.9 49% Sweden 3.9 48% Belgium 3.8 48% France 3.8 47% United States 3.7 46% Canada 3.7 46% China 3.7 46% Netherlands 3.5 44% Korea, Rep. 3.4 43% United Kingdom 3.0 38% Brazil 3.0 37% Thailand 2.8 35% Hong Kong SAR, China 2.6 32% Average 3.9 49%
無償の家事・介護に費やした時間と余暇時間8時間に対する割合(男性)
Hours Portion against spare time Sweden 3.1 38% New Zealand 2.5 32% Mexico 2.5 31% Germany 2.5 31% Switzerland 2.5 31% Belgium 2.4 30% Canada 2.4 30% United States 2.3 29% France 2.3 28% Netherlands 2.2 28% Spain 2.1 26% Italy 2.0 25% Russian Federation 2.0 24% United Kingdom 1.7 21% China 1.4 18% Brazil 1.0 12% Korea, Rep. 1.0 12% Thailand 0.9 11% Hong Kong SAR, China 0.8 10% Average 2.0 25%
2:可処分時間に対する旅程作成時間の割合
旅程作成時間は、各データによってかなりばらつきがあります。Hotels.comによれば8時間、HotelFriendによれば12時間以上、WorldTripsによれば約30時間です。HotelFriendでは文中に20-30時間とも書いてあるので、平均して20時間程度の時間を旅程作成に使っていると言えるのではないでしょうか。
また、VISAの調査(2017年)によると8泊9日が平均的な旅行の長さでした。つまり、旅行1日当たりの旅程作成時間はHotels.comの8時間を基準とすれば、53分(8時間÷9日)、WorldTripsの30時間を基準とすれば、200分(30時間÷9日)となります。
余暇の8時間から無償の家事・介護に費やした時間を差し引き、残り時間(可処分時間)を旅程作成に充てたとすると、旅程作成時間の割合が19か国平均で女性では22%~66%、男性では15%~55%でした。メキシコの女性は79%~296%と余暇の残り時間では旅程を作成する時間を捻出することができない可能性があります。
可処分時間に対する旅程作成時間の割合(女性)
In case of 8 hours In case of 30 hours Mexico 79% 296% Italy 29% 107% Spain 26% 79% Russian Federation 25% 76% New Zealand 24% 74% Switzerland 22% 68% Germany 22% 67% Sweden 21% 66% Belgium 21% 65% France 21% 65% United States 21% 64% Canada 21% 63% China 21% 63% Netherlands 20% 61% Korea, Rep. 19% 60% United Kingdom 18% 55% Brazil 18% 54% Thailand 17% 53% Hong Kong SAR, China 16% 51% Average 22% 66%
可処分時間に対する旅程作成時間の割合(男性)
In case of 8 hours In case of 30 hours Sweden 18% 68% New Zealand 16% 61% Mexico 16% 61% Germany 16% 61% Switzerland 16% 60% Belgium 16% 60% Canada 16% 60% United States 16% 59% France 16% 58% Netherlands 15% 58% Spain 15% 56% Italy 15% 56% Russian Federation 15% 55% United Kingdom 14% 53% China 14% 51% Brazil 13% 47% Korea, Rep. 13% 47% Thailand 13% 47% Hong Kong SAR, China 12% 46% Average 15% 55%
このように旅程作成時間は可処分時間の大きな割合を占めることとなり、これが『人生における大きなストレスの1つ』である理由が分かりました。
また、Hotels.comによると、ミレニアル世代は旅行情報を調べ始めてわずか 40 分で飽きてしまうそうです。従って、上記で計算したように旅程1日当たりを1日で調べるというよりは、さらに多くの日数をかけて旅程を調べていると言えそうです。
3:日本旅行特有の問題
日本語に精通していないほとんどの外国人が日本を旅行する場合、日本語という壁があります。そのため、外国語表示や旅行情報が多く利便性の高い大都市に集中する傾向にあります。
実際、2019年において、47都道府県の外国人旅行者の宿泊場所は上位5都道府県で70%を占めます。対して日本人旅行者の宿泊場所は、上位5都道府県で35%なので、大きな違いです。日本語という情報の壁がない日本人がより多くの場所を自由に旅行しているのに比べ、日本語の壁がある外国人は、大都市や大観光地に集中していることが分かります。
外国人旅行者の宿泊数における都道府県別シェア(2019年)
Tokyo 22% Osaka 17% Kyoto 14% Hokkaido 9% Okinawa 9% Chiba 4% Kanagawa 2% Fukuoka 2% Yamanashi 2% Shizuoka 2% Gifu 2% Nagano 1% Aichi 1% Oita 1% Hyogo 1% Ishikawa 1% Kumamoto 1% Nara 1% Wakayama 1% Hiroshima 1% Nagasaki 1% Kagoshima 1% Kagawa 1% Niigata 0% Shiga 0% Iwate 0% Mie 0% Tochigi 0% Gunma 0% Miyazaki 0% Toyama 0% Aomori 0% Saga 0% Miyagi 0% Yamagata 0% Okayama 0% Fukushima 0% Tokushima 0% Ehime 0% Akita 0% Tottori 0% Shimane 0% Kochi 0% Yamaguchi 0% Fukui 0% Saitama 0% Ibaraki 0% Total 100%
日本人旅行者の宿泊数における都道府県別シェア(2019年)
Okinawa 9.1% Chiba 7.1% Hokkaido 6.7% Kyoto 6.3% Tokyo 6.0% Shizuoka 5.0% Nagano 4.9% Osaka 4.8% Kanagawa 3.8% Hyogo 3.1% Tochigi 2.6% Gunma 2.4% Niigata 2.2% Yamanashi 2.1% Fukushima 2.1% Ishikawa 2.0% Mie 1.8% Fukuoka 1.7% Oita 1.6% Miyagi 1.5% Gifu 1.5% Aichi 1.5% Wakayama 1.5% Nagasaki 1.4% Kagoshima 1.3% Shiga 1.1% Yamagata 1.1% Kumamoto 1.1% Iwate 1.1% Hiroshima 1.0% Fukui 0.9% Nara 0.8% Kagawa 0.8% Okayama 0.7% Ibaraki 0.7% Tottori 0.7% Yamaguchi 0.6% Aomori 0.6% Toyama 0.6% Shimane 0.6% Miyazaki 0.6% Akita 0.6% Ehime 0.6% Kochi 0.5% Saga 0.5% Tokushima 0.4% Saitama 0.3% Total 100.0%
4:旅行目的の変化
Booking.comの「2023 Travel Predictions」によれば、88%の旅行者はノスタルジックな旅を、80%が地域志向の旅を、73%が馴染みのない場所への旅を望んでいることが分かりました。今まで大都市や大観光地に集中しがちであった外国人旅行客が、地方へ分散する可能性や傾向があります。「もっと外国人旅行者に訪れて欲しい」と願う、日本の各地方の旅行業界・観光業界にとっては、外国人旅行者が抱く「地方情報が入手しにくい」という不満の改善は、最大の課題といえるのではないでしょうか。
2023年に最も人気となるであろう旅行や体験
出所:Booking.com
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