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10年後には日本の地方への旅行はできなくなる?(1)

10年後には日本の地方への旅行はできなくなる?(1)

 

目次

1:序文

2:地域鉄道事業者の現状

3:地域鉄道事業者の車両・インフラの老朽化

4:廃止された鉄道路線

 

いすみ鉄道

1:序文

今回から4回にわたって、日本の地方への旅行の主要ルートである地域鉄道事業者と乗合バス事業者の苦境について説明します。ほとんどの事業者が赤字となっており、現状のままでは路線の廃止が加速し、公共交通手段を利用した日本の地方への旅行ができなくなるかもしれません。

第1回目は地域鉄道、第2回目は乗合バス、第3回目は地方鉄道駅のバリアフリー化、第4回目は地方への旅行振興策について述べます。

2:地域鉄道事業者の現状

地域鉄道とは、新幹線、在来幹線、都市鉄道以外の鉄軌道路線のことをいいます。これらのうち、中小民鉄及び第三セクターを合わせて地域鉄道事業者と呼んでおり、2022年4月1日の段階で95社あります。2019年度の鉄軌道業の営業損益は95社のうち76社が赤字でした。赤字の割合としては80%となります。新型コロナウイルスの影響が出る前であっても、高齢化による人口減少や自家用車による移動の増加(モータリゼーション化)による利用者減少によって、地域鉄道事業者は既に苦境に陥っていました。

鉄軌道業の営業損益(2019年度)

鉄軌道業の営業損益

出所:国土交通省

 

3:地域鉄道事業者の車両・インフラの老朽化

赤字が継続したことにより、地域鉄道事業者は車両・インフラの更新が行えない状況です。

車両の耐用年数はディーゼル機関車など内燃車が11年、電車が13年です。しかし地域鉄道事業者の保有車両で、車齢13年以下の車両は15%しかありません。51年以上の車両は24%、31年~50年の車両は32%もあります。

また、トンネルについては耐用年数60年を超えているものが38%あります。また、橋梁は耐用年数40年を超えているものが81%もあります。

のと鉄道

4:廃止された鉄道路線

「利用者減少→赤字→老朽化→さらなる利用者減」という逆スパイラルに陥る中、鉄道路線の廃止が続いています。2000年から2021年まで廃止路線は累計1,158kmにもなりました。この廃止路線の距離にはJRも含みますが、地域鉄道事業者95社の営業距離が3,763km、JRの総営業キロが19,792kmであることを考えれば、過去22年間の廃止路線の距離の長さが理解できるでしょう。廃止路線は当然、全て地方路線です。従って、冒頭に説明したように「公共交通手段では10年後には日本の地方への旅行ができなくなる」というのは決して大げさなことではありません。

2000年以降に廃止された鉄軌道路線(km)

2000年以降に廃止された鉄軌道路線

出所:国土交通省

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